東京は山の手とはいってもチマチマした商店街のはずれにある小学校の校庭に スクリーンが張られ、子供だけでなく大人も混じった観客はおもいおもいに 校庭に座り込み、上映が始まるのを待っていた。 小学校5、6年生の頃だったような気がする。 多分、昭和34、5年頃の夏休みの夜だ。 (随分と前のことだ!) 上映映画はアニメ。 当時はアニメという言葉を聞いた記憶がない。 なんて呼んでいたんだろう。 小学校5,6年の頃といえば商店街にあった貸本屋の貸漫画本をよみあさり、 あとは「冒険」「少年ブック」といった分厚い付録がついていた月刊漫画雑誌が 発売されるのを楽しみにし、発行されたばかりの薄っぺらな週刊の「少年サンデー」を 読むくらいだった漫画愛読少年にとって、アニメはまったく別の世界だった。 『白蛇伝』は古い時代の中国が舞台で、白蛇が変身した美しい娘と人間の男の恋の物語。 子供だったせいか、恋の行方云々はともかくとして、 貸本漫画では味わったことのない初々しく詩情溢れる世界がそこにはあったような気がする。 昔話や御伽噺の世界ともすこし違う。 子供心にも、自分のまったく知らない世界。 とはいいものの遠くの雲の向こうにひょっとしてあるかもしれないと思わせる世界。 どこかで繋がっていそうな初々しい心象の世界。 『白蛇伝』は日本最初のカラー長編アニメ映画だ。 公開日は昭和33年10月22日(1958年)。 不思議なもので、何年かに一度くらいの割合でこのアニメをふと思い出す。 確かなことは何一つないけど、 白蛇の化身の娘の白い衣装や映像の動き、声が渾然一体となって 言葉には表現できないイメージとして記憶に残っている。 この言葉にならないイメージはなにやら自分の原心象の一つになっているような気がしている。
by marifami
| 2006-11-26 22:06
| 映像・歌
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